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2025年の包装資材の価格動向予想


2024年は包装資材の値上げに悩まされた1年でした。

2025年も残念ながらその傾向は続きそうな見通しです。

包装資材を紙とフィルムに大別して、その理由を以下に書きます。


1、紙製品の需要・価格動向


2024年4月の矢野経済研究所による紙・板紙市場に関する調査では、2023年の紙の需要自体は我が国のみならずアジア圏でも減少傾向であって、その傾向は2024年も続く可能性があるとされていました。



同じく2024年7月の紙パッケージ市場に関する調査では、年々市場は金額ベースで微増していき、2030年度の市場規模は2022年度比で約10%増に達するとの予想を打ち出しています。



この二つのレポートの意味するところは、紙自体の需要は減少傾向ながら、紙自体の価格に加えて付帯コストの影響を受ける紙パッケージは値上がりしているということです。


洋紙、板紙、古紙等の種類によって若干違いはあるものの、年末になって振り返ると、2024年の紙製品及び紙パッケージの動向は需要減・価格UPという上述のレポートの通りの動向になったように思います。

そしてそれは2025年も続きそうです。


以下、参考までに2024年の紙製品は値上げのプレスリリースの一例。


ダンボール大手・レンゴー

紙製品大手日本製紙・クレシア

印刷用紙・情報用紙大手・王子製紙


続いて、2025年に予定されている値上げの一例。


レンゴーの2025年1月からの白板紙(白コートボール)の値上げ。

日本製紙の2025年4月からの牛乳パック等の紙液体容器の値上げ。


2、フィルム製品の需要・価格動向


2024年7月の矢野経済研究所による高機能包装材料市場に関する調査では、2023年はコロナの巣ごもり需要の減少や値上がりによる市販品の買い控え等で、コロナ時期よりも需要は減退したものの、食品の包装材料の需要増等で2024年以降は需要は回復する見通しです。

これも年末になって振り返ると、概ねその通りに推移したように思います。



上記レポート内にも記載されているように、紙包装を削減する動きが活発化していることは、フィルム製品の需要拡大につながっている側面もあります。


例として挙げられていて、イメージしやすいのはレトルトカレー等です。

従来は紙箱にアルミのレトルトパウチ包装が入っていて、消費者は紙箱からパウチ包装を取り出して湯せんして利用していました。

それをパウチ包装に直接印刷を施すことで、紙箱を省く商品が増えています。


S&B レトルトカレーの一例 (紙箱にパウチ包装が封入)


無印良品 主要なレトルトカレー(パウチ包装に直接印刷・箱なし)


最近は脱プラを志向する言説が目立ちますが、包装の簡易化の流れが進むと、まず紙が削減される傾向が強く、むしろフィルム等のプラ包装については今後ますます活躍していくかもしれません。


なお、2024年にフィルム原紙は大きく値上がりしており、価格は紙製品と似たような動向です。


参考までに、2024年の値上げのプレスリリースの一例。


フィルム原紙大手・東洋紡

フィルム原紙大手・グンゼ

フィルム原紙大手・東レ


3、原材料以外のコスト要因


紙原材料のパルプの輸入価格は、2020年を100とした場合、2024年11月段階では123と高止まっています。

しかし、一時は160を超えていたこと等を踏まえると、落ち着きを取り戻しつつあると評価しても差し支えないと思います。


日本銀行 企業物価指数を基に株式会社アクシスリサーチ研究所がグラフ化。


フィルム製品の原材料は原油価格に左右されます。2024年は3月頃に1バレル85ドルを超えた時期もありましたが、現在は70ドル前後で推移しています。

再任するアメリカのトランプ大統領によるエネルギー政策の転換等で原油需要が増えるという見方もありますが、中国の原油需要の伸び悩み等もあり、どちらかというと60ドル台半ばくらいまで緩やかに下落するという見通しが強い様子です。


日本総研 原油市場展望


為替にも左右されるので一概には言えませんが、以上のように、包装資材の原材料は今のところは高騰する様子がありません。


やはり注視すべきは人件費・物流・エネルギーコストです。


人件費について、名目賃金は上昇傾向であるものの、実質賃金が物価上昇に追い付いていない状況であり、メーカーの人件費コストが引き続き上昇していくことはほぼ間違いありません。


「実質賃金はゼロ近傍での推移(10月毎月勤労統計)」 第一生命研究所 2024/12/6



物流コストについては、働き方改革関連法の適用でドライバーさんの残業等が規制されることによる影響、いわゆる「2024年問題」が起因した運賃の値上げ等が最近相次いだことは記憶に新しいかと思います。

2025年はさらに、4月から段階的に施行される「改正物流総合効率化法」の影響が発生します。

詳説はしませんが、システム導入や規制対応に伴うコスト増加を物流業者は強いられるため、少なくとも短期的にはさらに運賃が値上げされる可能性はかなり高いです。


「改正物流総合効率化法施行で企業が対応するべきこと」三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2024/12/05


エネルギーコストについては、メーカーの機械を動かす燃料代等は「燃料油価格激変緩和補助金」が高騰を抑えている側面がありますが、この措置は差し当たり2025年1月半ばまでとなっており、その後は段階的に縮小される見通しです。


資源エネルギー庁 燃料油価格激変緩和補助金


また電気代等については同じく政府からの支援があって高騰を抑えている側面があります。少なくとも2025年1月~3月までは「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による同様の措置が継続される予定になっていますが、その先はわかりません。


資源エネルギー庁 電気・ガス料金負担軽減支援事業


電気代には火力発電所が使う燃料価格も影響してくるため、液化天然ガスや原油等の価格動向も重要ですし、為替にも左右されます。

また、原子力発電所がどの程度稼働するかも関係してくるため、なかなか先々を見通すのが難しい状況ではあります。


3、まとめ


以上の通り、基本的には包装資材の原材料となる紙・フィルム等の原料価格は落ち着いているものの、その他のコストは2025年も上昇が続く見込みです。

包装資材は全般的に値上げが続く可能性の方が高く、我々中小企業にとっては、さらに価格転嫁を進めていかなければならない1年になりそうです。


2025年は『相対的に低コストでありながら見栄えの良い包装をどう実現するか』という課題に対して、2024年以上に向き合わなくてはいけない企業も多いはずです。


我々には60年の業歴で培った様々な実績があります。

お力になりますので、是非とも弊社までご相談をお寄せください。

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